スポーツは眼からはじまる
ボールゲームでは、「ボールをよく見る」ことが上達の定石であるが、ボールだけ見てプレーをすればいいのではなく、「同時に、まわりをよく見ろ」ともいわれる。ボールを見ながらまわりも見るというのは矛盾しているが、ボールの位置、スピード、方向などは中心視から、相手選手や味方の位置、行動は周辺視から取り入れることをさしている。
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メガネのアマガンセンター店は、西は神戸市/芦屋市/西宮市と東は大阪市、北は伊丹市/川西市/宝塚市/三田市の間に位置する尼崎市で、1956年に眼鏡専門店として開業いたしました。当店では、平成17年より度付スポーツメガネの制作にあたり、様々な問題を解決するために、度数補正システムを初め、ハイカーブフレームに度数を挿入いただいた体験コーナー、ハイカーブレンズ加工機を設置しております。
スポーツにおける視野の広さ
中心視しつつ、同時に周辺に気を配り、周辺から情報を得ようとするのはボールゲームだけではない。
剣道
剣道には、「遠山(えんざん)の目つけ」という言葉がある。これは、遠い山を見る場合、たとえば、山の頂の一本杉を中心にして、山全体を見るように見ようということである。ただボーッと見るだけでは何も見えない。どこかに中心をおいて見なければならない。剣道では相手の眼である。相手の眼を中心にして全体を見る。
相手の手の動きなどに眼をやってはならないという。竹刀、足の動きなどのどこかに相手の攻撃のキザシがある。それを周辺視でとらえるというのである。
また、目を見張ってはならない。目は「観音の目」であれともいう。目を見張れば目筋力が入り、それは身体全体に影響するという。目を見張ること、つまり相手の眼を凝視することは中心視に極端に注意を集中することであり、それは周辺視での把捉がおろそかになることにつながるからであろう。
柔道
柔道の目ののつけ方は、「眼の位置の前方よりも高くなく、低くなく、広い野原に立って遠い山を、あるいは1本の大木を眺めるように、一定のところを凝視せず、意識的に眼を用いることなく、視野にあるものはことごとく眼に移す」という使い方が強調されている。
このように、眼球を動かさず、まばたきを少なくし、動く相手をよく注意できる目の付け方は技術的に大きな効果をもたらすという。実際に、柔道鍛練者は非鍛練者にくらべて一点を注視するときの視線の動揺が少ないことがわかっている。
また、柔道では、古来から、視野全体に注意を配る目の付け方を「観の目つけ」、相手の一部分を注視するのを「見(けん)の目つけ」と呼んでいる。「観の目つけ」、「見の目つけ」のどちらが有効であるか実験がおこなわれている。視野内に現れた刺激をできるだけ速く注視するという課題では、刺激に眼を向けるまでの反応時間には「観の目つけ」「見の目つけ」での平均値には違いはなかった。しかし、「観の目つけ」のほうは安定的であるが、「見の目つけ」では反応時間のチラバリが大きいので、やはり、視野全体に注意を配る「観の目つけ」が有効であるとされている。
われわれは柔道にかぎらずスポーツをする際、おそらく99%以上の情報を目から得ている。目が見えなくなってしまえばほとんどの競技をすることができなくなってしまう。
テニス
中心視しつつ、同時に周辺視でまわりが見えている選手が視野の広い選手ということになるこのような視野の広さは、すでに述べたように対象への注意の向け方と関係が深い。例として、テニスのクランドストロークをとりあげてみよう(図15)。いま、相手チームAの打ったボールをグランドスクロークで返そうとしているプレーヤーは、少なくとも次の3つを瞬時に判断しなければならない。
る。
①どこでスクロークすればいいか(どこにボールが飛んでくるか)
飛んでくるボールの速度、回転、コース、高低から、さらにコート条件、風向きも勘案して、どの位置にスクロークするべきか。
②どのようにスクロークするか
飛んでくるボールの速度、回転などを考えて、ボールをどの位置でとらえ、ボールに与える回転とスピードをどのようにするか。
③どこにスクロークするか
相手プレーヤーの位置、くせ、戦況などを勘案して、どのような球種のボールをどこにスクロークしたらよいか。
初心者の場合、①どこで打ったらいいか、あるいは、②どのように打ったらいいか、に注意の大部分があると思われる。このようなときには、ボールを見ながら同時に周囲の状況をとらえることは難しい。打ってからはじめて、相手プレーヤーの存在に気づくことも珍しくない。もし、注意を周辺の把捉に向ければ今度はスクロークがうまくできんくなる。
①、②がすでに「自動化」されている熟練者では、③どこに打つかに注意のほとんどを向けることができる。ショットの判断に必要な相手プレーヤーの動き、たとえば、Bがボレーに出ようとするわずかな動き、Aがネットに詰めてきたこと……などをはじめとして、相手の2人のプレーヤーの間隔、さらに奥行きの深さまでもが、ボールを見ながら同時に視野の周辺で見えている。そして、それをもとに、ストロークを打つか、ロビングをあげるか、強打か、柔らかく落とすかなどを決定する。初心者の眼(網膜)にも熟練者と同じようにA、Bプレーヤーの動きは映っているが、注意を向けないものは知覚されない(見えない)のである。
他のボールゲームの例として、バレーボールでは、スパイクを打つときに、トスされたボールを見ながら同時に相手ブロックの人数、位置、高低、タイミングなどを周辺視でとらえ、打つコース、強さ、フェイントするかを瞬間に判断している。優秀な選手になるとブロックだけでなく、レシーバーの動きまで見えることがあるという。もちろん、最初からこのようなことはできないが、ボールを見ながらも意識的に周辺に注意を払うことにより、しだいに相手の様子が見えるようになるという。
テニスやバレーボールにかぎらず、熟練した選手に共通するのは、周辺への注意の向け方漠然としているのではなく、ゲームの状況のなかで、視野内のどこに、いつ、どれくらい注意を向けたらいいかがあらかじめわかっていて、しかもそれが的確にできることである。このような選手が視野の広い選手であり、これは生理的な視野の広さとは、本来、無関係である。
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瞬間視(チラッと見る)
以上は、視野の一般的な定義である眼を動かさずに見える範囲であった。スポーツっでゃ、顔や、あるいは眼だけサッと動かして対象をとらえることも大事である。ポールゲームではインプレー中に眼を止めてどこかをじっと見ることはまずない。瞬間的に要所要所をチラッと見ることがほとんどである。瞬間に周囲の状況をとらえる選手も視野が広いということになる。
瞬間的に周囲を見る必要があり、かつその能力が問われるのはサッカーやラグビー、アメリカンフットボールのように、多人数でしかも敵と味方が入り乱れるスポーツである。
このようなスポーツでは、選手の背後から神の声といわれる的確な言葉を送る「指令塔」と呼ばれる選手がいるのがつねで、ゲームの状況をもとに最良のプレーの指示を出している。
ほんのわずかの間に相手チームの守備の弱点を見つけ、味方に的確な指示を送るプレーは驚くばかりである。この状況の把握のもとになるのが瞬間視、チラッと見ることである。ゲームの状況判断能力は次章で述べるので、ここでは瞬間の知覚についてみることとする。
私たちは瞬間的に見たものを、どれくらい正確に知覚することができるだろうか。これを調べる実験として、タキストスコープ(瞬間露出器)を使ったものがある。たとえば、3行×3列の文字や数字を0.1sec程度、瞬間的に見せて、見えた文字や数字を全て報告させるというものである。この方法で調べられる瞬間の知覚は、短期視覚情報の保存と関係があるといわれている。0.1sec、あるいはそれ以下という瞬間に数字が示され、さて数字は何だったか忘れてしまうということがしばしば起きる。
報告する数よりもっと多くの数字が見えたのだが忘れてしまうというのは、数字がパターンのい認知などにかかわる処理をまだ受けていない状態のまま、Iconic Strage(アイコン)と呼ばれる機構に一時的に保存されているためであるという。アイコンは時間とともに消えてゆく写真のような性質であるといわれ、その持続時間は約0.27secと推定されている。
スポーツでは動くものの瞬間的な知覚のほうが大事であろう。動くものを瞬間的に知覚する能力はどうであろうか。
斜面に1~10個の間の任意の数の球(直径1cm)を転がして、見える時間を0.35~0.45secに制限したとき、いくつの数までなら正確にわかるかを調べた実験がある。これによれば、0.35~0.45secという提示時間内で正確に数の知覚ができるのは3個までで、4個以上になると正答率がしだいに減少し、7個以上では正答率が50%をきっている。
この実験は見えている時間が一定であったが、今度は見えている時間を変えた場合どうなるのであろうか。提示する時間を0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、1secの6種類にして、同じく、いくつ知覚できるかを調べると、全員(100名)が4個より少ない数では0.1~0.3secという短い時間でも個数を正しく回答している。
この実験では静止している視標も調べている。静止している場合には4個以内の数なら0.01~0.05secというごく瞬間的な時間内でも正しく回答している。つまり、知覚できる数に限界があること、止まっているものの数はごく瞬間的にわかるが、動いているものはそれに比べてはるかに時間がかかることがわかる。
90%の正答率が得られるのを瞬間的な把握とすると、対象が動いている場合でも静止している場合でも、その限界は4個であるという。数が4個をこえる場合には、提示される時間が少なくなるにしたがって正答率は減少してゆく。
このような、一目見正しく言い当てることのできる数は、知覚範囲、あるいは注意の範囲と呼ばれている。これまでの研究では、提示時間が0.1sec程度であれば、止まっているものを100%いいあてることができるのは4個が限界であるという。正答率50%まで下げれば7~8以上は、0.1secほどの、ほんの一瞬の間の認知で、実際のスポーツではこれほど短い間に瞬間的に見て判断しなければならない場面はまずないだろう。また、チラッと見るときにも、いまはどのような状況かというように、対象を意味あるものとしてとらえている。すぐれた選手が瞬間的に判断、指示ができるのは「見るべきところ」がわかっていて、そこから的確に情報を取り込めるからと思われる。
[最終更新日] 2023年07月16日 /[公開日] 2021年05月20日
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