累進多焦点レンズとは境目のない遠近両用メガネ
累進多焦点レンズ(遠近両用レンズ)が主流になるまでは、二重焦点レンズや三重焦点レンズ(バイフォーカルレンズ)といった見た目にクッキリとみえるスジが入ったレンズが普及していました。
境目のない遠近両用レンズの祖 バリラックス
目次
いまやこれほどまでにバラエティーに富んだ遠近両用レンズが手に入るようになりましたが、1枚のレンズにこれほどまでにさまざまなピントを合わせられる技術の開発は、そう簡単なものではありませんでした。
老視の存在は早くから知られていましたが、老眼鏡がいつ発明されたかは定かではありません。信憑性のある資料としてもっとも古いものとされているのが、1280年にイタリア北部で使用されていた、というものです。
これは、ヴェネツィアン・グラスの生産地として有名なイタリア・ヴェネツィアの北東にあるムラノですが、14世紀には両凹面レンズ生産の中心地でもありました。
二重焦点レンズの発明が境目のない遠近両用レンズへと進化
二重焦点レンズの元となるメガネを発明したのは、アメリカ独立に多大な貢献をし、100ドル札にその姿が描かれている政治家ベンジャミン・フランクリンです。
半分にカットした遠近両用レンズと近用レンズを同じフレームに入れて形成するという、非常に単純な構造のレンズでしたが、これが人類初の二重焦点レンズだと考えられています。
ちなみにフランクリンは凧を用いた実験で雷が電気であることを明らかにしたり、避雷針やロッキングチェア、グラスハーモニカなども発明しており、政治家のみならず、科学者の顔ももっていました。100ドル札と二重焦点レンズ、まったく関係ないようですが、意外に近い関係だったんですね。
20世紀に入ると、欧米各国の多くの科学者が老視用レンズに興味を持ち始め、1910年、融着二重焦点(2枚のレンズを融着させてつくった境目のある二重焦点レンズ)がアメリカのシロール社(現在のフランスのエシロール・インターナショナル社)のボルシュ博士によって発明されています。
ただし、累進レンズに対するアイデアはあったものの、実際にそのようなレンズを製作する方法を発見できるものはだれもいませんでした。
「バリラックス」発明者ベルナール・メトナーズ博士
では「ルイシンレンズ」をつくったのはだれか。それがベルナール・メトナーズ氏です。
氏は早い段階で、一般的なバイフォーカル・レンズ(二重焦点レンズ)では中間距離の視野に役立たないこと、そして目の動きとストレスのない視野を両立するには、連続的に度数が変化する累進屈折力レンズが必要と考えたのです。
その発想は確かめるために、最初4000個ほどの違った度数のレンズを組み合わせたオリジナルレンズをつくりました。まだ累進レンズではなく、多焦点レンズだったわけです。
私(梶田雅義先生)はメトナーズ氏とともに講演会もしたことがあり、親交もあるのですが、最初は老眼が進んだお父さんに、快適に見えるためのレンズをつくってあげたいと思ったのが発想の原点だったそうです。
実際に4000個の多焦点レンズのメガネをお父さんにかけてもらったところ、「これはよく見える」と喜んでくれたとおっしゃっていました。
それでも4000個のレンズの組み合わせが1枚のレンズになるまでには、10年間以上の研究機関を要しています。
ようやく「バリラックス」という名前で発売された以降も、幾度なく改良が加えられ続けています。その結果50年以上続くロングセラーとなり、遠近両用レンズの代名詞といえるまでに成長したのです。
いまでは、バリラックス愛用者は世界に4億人以上もいるそうです。
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[公開日] 2026年01月31日
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